第一話がこちらになります。
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半裸さんは拗ねるディーナちゃんの頭を撫でようとしますが、避けられたので仕方なく椅子へ座り直しました。
「マスターはバウンティハンターを導いてくれる『誰か』で、人によって捉え方や感じ方が違う謎な人物の総称だよ。」
半裸さんの説明に対して、ディーナちゃんが意味が分からないと言いたげに眉を寄せました。
「異世界の友人、自分の別人格、神様やら仏様やら何やら言い様は様々さ。見守ってくれて、応援してくれて、とても暖かくて信頼できる人という部分は共通かな。」
半裸さんは身振り手振りを駆使して、必死にマスターの素晴らしさを表現しようと試みますが、今一つ伝わっていない様子です。
「マスターが付いている事がバウンティハンターとなるための条件に含まれるほど、とても大切な存在なんだ。」
感慨深げに頷く半裸さんに対して、ディーナちゃんは今一つ飲み込めずに訝しげな表情を浮かべていました。
「胡散臭いけど、そのマスターがあんたをオレの所へ連れてきたと?」
ディーナちゃんがやや生温い視線を半裸さんへ向けながら聞いてきます。
「散歩に行こうと思ったら、森へ行こうと言われて、ディーナちゃんと出会ったの。あとディーナという名前もマスター発案ね。」
「で、そのマスターは今もそこにいるわけ?」
半裸さんの表情が少しだけ寂しそうに陰りましたが、ほんの一瞬で元へ戻ります。
「ううん、隣には居ないよ。ボクのマスターは照れ屋だからテレパシーで囁いてくるだけなの。窓や空にマスターが映って見える人も居るけど、ボクは見た事がないね。」
「映って見えるなんてホラーじゃんか。」
ディーナちゃんの素直な感想に、半裸さんが苦笑を浮かべます。
「そうだね。慣れるまで怖いかもね。」
半裸さん達がマスターについて語り合っていると、ドアを開けてワリトちゃんが入ってきました。
ディーナちゃんがその事へいち早く気付いて、ビクッと体を強張らせて、腰を椅子から浮かせました。
「おや、ワリトちゃんか。今度は寝惚けてないみたいだね。」
半裸さんが振り返って声を掛けると、ワリトちゃんは無言のまま小さく頷いて歩み寄ってきました。
ワリトちゃんは半裸さんの隣まで来ると、テーブルへ手を掛けて、膝の上へよじ登ってきました。
半裸さんも抵抗するでもなく、むしろ通り道を空けて待ちの体勢を取っていました。
「ディーナちゃん、怖がらなくて大丈夫だよ。寝惚けていたりしなければ、優しくて可愛い子だからね。」
そういって膝に座ったワリトちゃんの頭を撫でてやります。
ディーナちゃんは大人しく撫でられているワリトちゃんの様子に安心したらしく、椅子へ腰を下ろしました。
「そうそう、ワリトちゃん。あの子はディーナちゃん、今日から新しい家族だから仲良くしてあげてね。」
半裸さんの紹介に対して、ワリトちゃんが右手を上げる仕草で挨拶を送ります。
ディーナちゃんはその挨拶へ応える事が、家族入りを承認する行為と解釈されると分かり、そっと目を逸らそうとしました。
しかし、ワリトちゃんの無感情な瞳から目を外す事ができません。
そうしている間に、ワリトちゃんが右手を軽く引き戻してから、先程より勢いよく突き出して挨拶を催促してきました。
無表情だけに何を考えているのか分からないワリトちゃんに気圧されて、ディーナちゃんがゆっくりと右手を挙げます。
「よ、よろしく。」
ディーナちゃんが顔を強張らせながら挨拶を返すと、ワリトちゃんが満足した様子でOKサインを見せます。
そして、ワリトちゃん以上に満足げな表情を浮かべていたのは半裸さんでした。
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