[小説:P★RS 半裸さん日記] part6
2012-10-21


第一話がこちらになります。
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「あんた、何なんだよ。」
ディーナちゃんが目を逸らしたまま呟きます。
半裸さんはその言葉に対して軽く首を傾げました。
「ああ、まだ名乗ってなかったね。ボクは半裸のサンタ、みんなは半裸さんと呼ぶから、ディーナちゃんもそう呼んでおくれよ。」
「そうじゃない。なんで、オレに優しくするのさ。他の連中は無視したり避けて通ったり、銃で撃ってきた奴だって・・・」
ディーナちゃんは言葉を詰まらせて、そのままギュッと唇を堅く引き締めてました。
辛い事を思い出している風に見えたので、半裸さんは間を置いてから真面目な口調で語り掛けます。
「他の人がどうか知らないけど、ボクは曲がりなりにもサンタだもん。困っている子は見捨てておけない性分なんだよ。」
半裸さんはそう言うと、少し冷めた紅茶を飲みながらディーナちゃんの反応を待ちます。

「あんたは変だよ。訳が分からないよ。」
ディーナちゃんが混乱しているのか、声を震わせながら呟きました。
「上着を着ない主義をよく変だと言われるけど、その事かな?」
ディーナちゃんは俯いたまま大きく首を左右に振って応えました。
「それ以外だと心当たりがないけど、何が変なのか教えてくれるかな?」
「オレはさっき殴ったり蹴ったりしたのに、なんで普通に会話してるのさ。怒らないし、、パンを食べさせてくれたり優しくて、訳が分からないよ。」
ディーナちゃんが一気に捲し立てると、半裸さんは頬をポリポリと掻いて困った様子になりました。
「ディーナちゃんが暴れたのは、ボクが驚かせて怖がらせたせいだよ。ボクが悪いのだからディーナちゃんを怒る理由がないのさ。」
ディーナちゃんは反論しようと思いましたが、半裸さんの笑顔に無駄と悟って視線を床へ落としました。

「なんで、名前を付けてくれるのさ。」
「家族に名前がなかったら不便じゃないか。ドールちゃんと他人行儀に呼ぶのも変だろ?」
「だから、どうして、一緒に住む話が確定しているのさ。」
ディーナちゃんが机を叩きながら椅子の上に立って、身を乗り出してきました。
半裸さんはその反応に驚いて、椅子の前脚を浮かせながら後ろに仰け反ります。
「もしかして、一緒に住むのは嫌なの?」
半裸さんの寂しそうな声を漏らすと、今度はディーナちゃんが驚いた様子で前屈みの姿勢を戻しました。
「食料は腐りそうな勢いで余っているから気にしなくていいよ。だから、気兼ねしないで、ボクと一緒にここで暮らそうよ。」
今度は半裸さんが大きく前に乗り出して、ディーナちゃんを説得し始めました。
「どうして、見ず知らずの怪しいドールなんかに、そんな一生懸命になるのさ。」
「マスターが導いてくれたってのもあるけど、ディーナちゃんと一緒だと楽しい事がありそうな予感がするんだよ。」
半裸さんが一瞬の躊躇いもなく即答してみせると、ディーナちゃんは呆気にとられて椅子へ座り込みました。

半裸さんの期待に満ちた熱い眼差しを受けながら、ディーナちゃんはまだ少し混乱していました。
「マスターって誰だよ。」
話題を逸らすために適当な質問を口にすると、半裸さんが目を丸くしながら驚きの声を漏らします。
「ディーナちゃん、本当にマスターが何か分からないの?」
「な、なんだよ。マスターが誰か分からないのがそんなにおかしいのかよ。」
「ディーナちゃん、君はもしかして」
半裸さんの言葉が終わる前に、ディーナちゃんが可哀想な生き物を見る目を向けられた事に怒ってリンゴを投げ付けました。
リンゴは半裸さんの鼻先を綺麗に捉えて、そのまま天井へ向かって跳ねていきます。
半裸さんは左手を赤くなった鼻へ添えながら、落ちてきたリンゴを右手で掴みました。

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